ライブ当日、僕が想っていたこと その6

 

技術打ち合わせというのをここの会場スタッたちとしていたとき、会場の音響スタッフのひとりが、図面に描かれたステージ後ろのスピーカー群を見て「ん? これってもしかしてジョイさんのライブ? 」と叫んだ。

 

彼はたまたま以前に別の立場で僕のライブにスタッフ参加していて、こんなふうにステージ奥にズラッとスピーカーを並べる特別仕様を知っていて、そんなふうにスピーカーを使うのは僕のライブくらいしかないことを知っていたのだ。

 

それくらい僕のステージ準備は他にはない特別仕様だったりする。

 

なにせ一般のお客さんをステージに上げて催眠をかけるのだから、普通ではないのだ。

 

我ながら不思議なエンターテイメントをしているなぁと想うことがある。

 

こういう形になったのも、長年試行錯誤して行き着いた結果のスタイルであり、これはこれからも変わっていくものだ。

 

試行錯誤は今も続いているのだから。

 

安定したい、安心したいという欲求は僕の中にもある。

 

生き物として、安定は身の安全であり、それは安心して生きていけるという、それは生きていく上で最も優先すべき重要事項のひとつである。

 

でも、気がつくと、必ずと言っていいほど、真逆の道を選んでいる自分がいる。

 

いつも何かに挑戦していたい・・なんて格好つけて言うのなら自分でもわかる。

 

言いながら自分に酔って、気取ってんなぁ〜なんて笑える。

 

けど、格好なんてつけていない。

 

誰もこれがどれだけ大変かをわかってくれてはいないのだから。

 

誰にもわからないところで挑戦し苦労しているのは、紛れもなく、自分がそれを好きでやっているほかない。

 

決して笑えない・・・自己分析の結果。

 

あははは・・・くらいの苦笑いだな。

 

 

13時少し前からスタッフたちもそれぞれ自分の担当部署に戻ってきた。

 

「ジョイさん良ければリハ始めましょうか? 」と舞台監督のK田さんの呼びかけで、いよいよ僕らのリハーサルが始まった。

 

新演出、新エンタネタで、やること盛りだくさんのリハ。

 

客入れは10分前倒しの18:20の予定。

 

リハは17時まで続いた。

 

それでもやり残したことは細かく幾つもある。

 

でも、それを全部やろうとは思わない。

 

なぜなら、リハをしっかりやって安心しきっていいエンターテイメントではないからだ。

 

ある程度の緊張感を残して本番に臨む。

 

95%アドリブのステージ。

 

本番までの1時間と少し。僕はふたたび楽屋に戻る。