なんとなく…ふと、
ライブ当日の自分の記憶を辿りたくなってね。
6月30日朝。
前日から会場近くのホテルをとってもらい、宿泊していた。
前の晩は・・そうだな、12時前には寝ただろうか?
進行台本を眺めながら、とは言っても、ほとんどアドリブで進行していくライブなんだけど。
それでも台本を眺めてると、いろいろアイディアが湧いてくるものだし、ここはどんなふうに話を展開して次に繋げていこうか、なんて考えるほどいろいろな箇所が目につくから。
それをひとり、部屋の中で、あーでもない、こうでもないって。
ちょうどいい感じで姿見のような鏡が部屋にあったから、その中の自分に語りかける感じでひとりリハーサル的なことをしていた。
でも、あまりやりすぎると、その自分リハに縛られて本番の自由度がなくなってしまうから、適当に切り上げた。
やってるうちにテンションが上がって、頭が冴えてきちゃうと寝付けなくもなるからね。
最後はベッドに入って本を読む。
ライブから頭と心を切り離すために小説なんかを持参してページをめくってた。
・・・
5分ほどで寝落ち。
そこから2時に目が覚め、3時に目が覚め、4時に目が覚めて・・・( もう1時間くらい寝ときたいな、なんせ今日はライブ本番だから…)と、目を閉じる。
次に目を開いたら4時55分。
(オーケー起きるとしよう)と自分に言い聞かせてベッドから出る。
5時間くらい寝ておけば、体力と集中力は大丈夫だろう。
さて、ホテルから会場までは歩いて4,5分のはず。
スタッフたちは9時から会場で仕込み開始予定。
本当は僕も9時入りして、なんなら仕込みから一緒に動きたいところだけど、それはスタッフたちに気を使わせて邪魔になる。
昔はその辺りの機微がわからず、スタッフと一緒に小屋入りしては迷惑がられた。
リハーサルは13時から。
本来なら12時に会場に入ればいい。
でも、僕のイメージでは、11時に食事を済ませておいて2時間後のリハに臨むのがベストだろう。
5時にリハを終えて軽く食事をすれば、本番前にちょうどいい腹ごしらえができる。
お昼が遅いと本番前に食べられずステージ上でお腹が空いてしまう。
これは経験上避けたいところだね。
確か10時半には食事の準備ができるとプロデューサーが言っていたから、10時にホテルを出ることにしよう。
密かに楽屋入りして先に食事を済ませてしまってから、ゆっくりとスタッフたちに、今来ましたってふうを装って挨拶しようか。
それまでは部屋で過ごす。
シャワーを浴びて身支度の時間を考えても4時間ほどある。
少しだけ昨夜の自分のリハの続きをしようか。
うーん、なんか本番前のジタバタ感があって気がノらない。
ひとまずコーヒーを淹れて今日一日のイメージを強化することにした。
泊まってるこのホテルのいいところは部屋にテレビがないこと。
その代わり天井に小型のプロジェクターがあってベッドサイドにHDMIの接続がある。
つまり、パソコンに繋いで動画配信などで映画を観る用にセッティングされている。
時代は変わったね。
昔はテレビの横に100円玉を入れる箱型の機械が付いてて、それで30分間観られる…なんていうホテルや旅館があったのに。
それにしても無駄なものがなくてすっきりとしてした部屋なのだ。
コーヒーを2杯飲んでイメージを広げていたらムズムズしすぎて逆効果になった。
ライブのイメージをすれば、早く現場に入りたくなるに決まってる。
スマホをタップして時刻を確認するとまだ7時半。
う〜、あと2時間半もある。
とにかくシャワーを浴びてリフレッシュする。
いつもの倍の時間をかけて髪を乾かしセットする。
どうせリハーサルで汗をかき髪もまたボサボサになるだろうけど、リハーサルから撮影が入ると聞いているし。
なんだかんだ準備してたら9時を過ぎた。
スタッフから連絡が入る。
予定通り仕込みが始まったとのこと。
当たり前なのだけど嬉しい。
いよいよ今夜そのステージに立つのだから。
さて、小型のスーツケースに自分の楽屋周りのものを詰め込んで、9時半すぎに部屋を出る。
部屋で待つ自分を制御するのも限界となった。
早く着いたら楽屋に身を潜めていればいい。
有楽町の朝。
金曜日の平日、少し遅めの通勤途中の人たちが黙々と歩いている。
( みんなツマラナそうだなぁ。僕のライブに来たらいいのに )
と勝手に思いながらスーツケースを引っ張っていく。
会場近くのグッチのところまでU井さんが出迎えてくれる。
今日という日のためにお互いに頑張ってきた仲間だ。
「おはようございます!いよいよですね」
「そーだね!」
いい顔をしてる。
ちょっと目の下にクマが…昨夜寝ていないのかな?
みんな手を抜かず、頑張ってくれている。
僕はそれにステージで応えるのみ。
会場となるマリオン一階のエレベーターにライブのポスターが貼られていた。
さらにテンションが上がっていく。
・・・続きはまた。
